№1 取材商法に気を付けましょう
最近,取材商法といわれる“勧誘ビジネス”が増えているようです。
例えば「・・・の○○と申します。弊社では『△△△△』というビジネス誌を出版しているのですが、現在地元密着で活躍していらっしゃる企業様の取材をさせていただいております。御社のホームページを拝見し、是非掲載させていただきたいと思いまして」とか
「頑張っている会社の社長さんに取材をして経済誌に掲載している会社です。是非取材させていただきたいのですが」などと言って,取材の約束を取り付けてから,5万円から7万円程度の取材費を頂きたいとか,それ以外のもろもろの費用で数十万円を頂戴したいと言って,かなり執拗に食い下がる営業が横行しているようです。
「取材」と言いつつ,実体は広告です。
今のところ,「取材」を実施する前には,費用のことを説明しているらしいので,犯罪とまでは言えないのかもしれませんが,実体が広告なのに,「取材」ということ自体がおかしいですので,社会通念上,これは詐欺であると評価される時期がくるかもしれません。
なんと,当事務所にもこの一月ほどで,3件くらいの電話がありました(もちろん,お断りしました)。
それ以前でも,母校の小中学校に書籍を寄付しませんか,とか,雑誌に記事を載せませんかという勧誘はありました(私の母校は小学校も中学校も都心過疎で廃校になっているため,勧誘されようがなかったのですが(笑))。
「取材」という言い方は,ここ数年ではないでしょうか。ウェブ上でも話題になっているようで,このような勧誘を受けたという人がブログなどに載せているのが目に付くようになりました。
元スポーツ選手や最近テレビ等であまり露出しなくなった芸能人の方がインタビュアーになっている例が多いようです。
HPや当該雑誌そのものは存在しており,そういう意味では実体はあるのですが,「取材」という言い方が,受け手側を惑わせる要素になっています。
これだけ消費者保護が叫ばれ,まっとうな会社が苦労している中で,このようなわかりにくいビジネスが横行することは,クライアントの皆さんと汗を流しながら,苦労してコンプライアンス問題に取り組んできている身としては,許し難い行状であると言わざるを得ないと考えています。
もっとも,これらの実情を承知の上で,当該雑誌の取材に応じることまでも否定するものではありません。要は,理解した上で利用することは悪くはないのですが,相手が,きちんと当該勧誘内容の本質を理解できるような事柄を最初の段階から伝えようとしていないことが問題なのです。
似たような商法は,我が国に限らずよくあるようで,海外の輩(やから)からつけ込まれることもあります。
かなり前の話ですが,別のタイプですが,不意な勧誘を受けてしまったという相談案件がありました。広告のHP作成を勧誘する海外からのファクスに,役職者の方が内容をよく見ずにサインをして返信してしまって,後日,多額の広告料の請求を受けてしまったというものです。
ただ,その企業の法務部門はかなりしっかりしていて,企業同士の横のつながりで,他の会社で起きた同様な問題でどのような対処をしたかも調査した上で,私のところに相談に来ました。
その他社の件では某有名渉外事務所に依頼し,交渉の末,請求額の何割かで和解をしたということでしたが,今般は,是非に,払わずにすませたいというご依頼でした。
私自身は,英会話はイマイチで,もとより電話での交渉をすることは不可能ですので,一計を案じ,ファクスで,日本では,こういう請求は公序良俗違反で無効だと(もちろん,ここは英語で)主張し,反論があったら,書面でよこせ,と(ここももちろん英語で)書いて送りました。結局,反論は来ず,一件落着したことがありました。
何でも体当たりでやれば,道は開けるものです。
閑話休題
冒頭の件ですが,それにしても,法律事務所に勧誘するとはいい度胸をしているとも言えますが,みさかいがないだけかもしれません。
多くの弁護士が,このような経験をすれば,私も含めて,弁護士会の様々な役職に就いている者に行き当たってしまいますから,全国規模で問題が顕在化することになりますが,そのことに気づかないのでしょう。
私自身が立て続けに経験しましたので,これから啓発活動に取り組んでいきたいと思います。是非,自営業のみなさま,お気をつけいただきたいと思います。
勧誘トークは「HPを見ました」,ということですので,みなさまのHPにこの頁をお守り代わりに貼り付けていただいても結構です。もちろん,掲載料は頂きません(笑)
2013年7月1日 山﨑